「私は、多くのクライアントが、身体からのメッセージを無視するのをやめて、身体が伝えていることに耳を傾けるだけで、慢性的な医療問題を解決するのを見てきました」
ー「No Bad Parts」リチャード・シュワルツ著

「『いやだ!』『ノー!』と言わなければ、結局、身体がわたしたちの代わりに『ノー』と言い始めるだろう」 
ー「身体が『ノー』と言うとき」ガボール・マテ著

「体は私たちがどう生きるかを決定づける燃料ではない。むしろ、私たちがどう生きているかを映す鏡なのだ。体は人生経験の総計を反映するものだ」 
ー「病は心で治す」リサ・ランキン著

内的家族システム(Internal Family Systems Model:IFS)とは、アメリカのリチャード・シュワルツ氏が体系立てた、実践的な心理療法です。

トラウマ治療をはじめ幅広い分野で応用され、30年以上の歴史があり、現在世界中に広まっています。

マインドフルなあり方を促し、「Self(セルフ)」と呼ばれる「真の自己」に目覚めることを促します。

関節リウマチに対するIFSによる介入のランダム化比較試験

医学論文)関節リウマチに対する、IFSに基づいた心理療法的介入の転帰についてのランダム化比較試験

IFSによる関節リウマチ患者に対する臨床研究の結果が、2013年にJournal of Rheumatologyというリウマチ専門誌に掲載されました。(リンク

リウマチ患者は、IFS治療グループ(参加者39人)または教育グループ(コントロールグループ:40人)のいずれかにランダムに割り振られ、9か月間、3か月ごとに評価され、1年後に再び評価されました。

治療グループは、期間中に計15回のIFS個人セッションと、最初の3ヶ月間は隔週、その後は月に1回のグループセッションに参加しました。(コントロールグループは、リウマチに関する一般的な教育を受けました)

9か月の時点で、プロトコルを完了したIFS治療グループの患者は、自己評価による関節痛の程度、身体機能、セルフコンパッション(自分への慈愛や思いやりの気持ち)、自己効力感、抑うつ症状の改善を示しました。

その1年後、関節痛の程度、セルフコンパッション、抑うつ症状の改善が維持されました。

左側のグラフは、DAS28-CRP4という関節リウマチの活動性を表す数値、右側は患者様評価による痛みの程度を表しています。
点線がIFSセラピーグループで、黒い実線がコントロールグループの結果です。
数値は左から、セラピー開始前、3ヶ月後、6ヶ月後、9ヶ月後、21ヶ月後。
DAS28-CRP4は、4.1が「高い」2.3が「寛解」なので、3ヶ月で活動性がほぼ「高い」状態から、ほぼ「寛解」の状態に変化しているのがわかります。

(DAS28-CRPは、患者さまによる症状の自己評価だけでなく、医師の評価と血液検査の項目という客観的な項目が含まれているリウマチの活動性指標です)

私たちはみなナチュラルに多重人格である

IFSでは、私たちの心は多数の副人格(パーツ)の集合体である、と捉えています。

あなたは、自分の中に対立した思いを抱え、葛藤したことはないでしょうか?

たとえば、

・ダイエットのために食事量を減らそうと思っているのに、ついつい食べすぎてしまう

・会社をやめて好きなことで独立したいけど、食べていけるか不安で、なかなか実行できない

このような葛藤は、私たちの中にいるパーツたちが、それぞれに異なる意見や感情や欲求を持っているために、起きているのです。

IFSでは、私たちの「内側」でこのようなたくさんのパーツが相互に関係しあい、まるで「家族」のような「システム」を形成している、と考えています。
(そのため、「内的」「家族」「システム」と名づけられました)

IFSでは、徹底的に、私たちの中にいる「小さな人たち」に気づき、それらと対話することで自己理解を深め、自分自身を癒し、システムの調和を促し、それによる問題の解決や願望実現などを目指していきます。

トラウマとパーツ

私たちがこの世に生まれてトラウマ的な体験をすると、パーツたちは、生き延びるために、極端な役割を背負います

私たちが傷つくと、あるパーツがその傷つきによる痛みを抱えます。すると他のパーツが、その傷ついたパーツを守る、という役割を負います。

あるパーツは、傷ついたパーツが抱えている悲しみや怒りや恥や絶望などのつらい感情から私たちの意識をそらすために、何かの中毒(アルコール・スイーツ・煙草・ゲーム・買い物・リストカットなど)になるかもしれません。

または、痛みなどの身体の症状を引き起こすかもしれません。

あるパーツが持つ無力感は、私たちを慢性疲労にさせるかもしれません。

人の面倒ばかりを見て自分の面倒を見ないパーツがいると、他のパーツが、「自分を大事にしなさい!」といわんばかりに、身体の不調を起こして動けなくさせるかもしれません。

(先に挙げたIFSによる関節リウマチの研究では、実際にそのようなパーツが多くみられたそうです)

なぜ私はこれをするのだろう?(やりたくもないのに)、と思っている自分の行動や、悩みの種になる身体の症状は、じつは、パーツからのメッセージかもしれません。

このような、私たちにとって一見喜ばしくないことをしているパーツも、彼らの話をよく聞くと、それをするに値する実にもっともな理由を持っています。

そして、彼らが守っている傷ついたパーツを癒すことで、彼らを極端な役割から解放することができるのです。

彼らはいつでも私たちのためにベストを尽くしているので、IFSのモットーの一つは「すべてのパーツは大歓迎」です。

パーツたちについてよく知り、癒すことは、私たちの意識および身体に、大きなシフトをもたらすでしょう。

Selfー真の自己

もう一つのIFSの大きな特色の一つが、「Self」(セルフ)」という概念です。

Selfとは、パーツ「ではない」私たちの「本来の自己」であり、純粋な意識です。

すべての人の中にSelfがいますが、ふつうの状態ではパーツたちの下に隠されていて、表に出てくることはありません。

私たちが、パーツをパーツとして認識し、それと「距離をとる」ことで、Selfが現れてきます。

Selfは、慈愛・好奇心・明晰さ・穏やかさ・勇気・自信・つながり・創造性などに満ちており、驚くべき癒しのパワーを持っています。

ひとたびSelfの質が私たちの中に現れると、パーツたちはとても速いスピードで癒されていきます。

IFSでは、セラピストがクライアントを癒すのではなく、クライアントのSelfがクライアントのパーツを癒すことをサポートしていきます。

つまり、癒しや問題解決のリソースはクライアント自身の中にある、とIFSでは考えているのです。

IFSのゴールの一つは、クライアントのSelfとクライアントのパーツの信頼関係を育てることにより、内なる心のシステムを調和に導き、Selfがシステムのリーダーシップをとること(セルフ・リーダーシップ)です。

Selfであることは、パーツ(いわゆるエゴ・自我)を俯瞰して眺めている、マインドフルな視点を持つことでもあります。

自分自身への理解と慈愛(思いやり)が心身を癒す

自分のパーツへのコンパッション (慈悲・思いやり)が、癒しのキーとなります

IFSでは、クライアント自身がクライアントのパーツと内なる対話を重ねていくことにより、クライアントの心のシステムを調和のとれた状態に導くことを目指していきます。

普段とても頑張っているのにかえりみられていない自分のパーツに対して思いやりを表したり、普段無視されているけれど深いところで私たちの人生に影響を与えている傷ついたパーツを自ら救い出すことは、その人の心身にドラスティックな変化をもたらすでしょう

アメリカでの関節リウマチ研究の参加者が語っているとおり、IFSは、自分を理解し、愛するための、とても素晴らしい方法です。

そしてそれは、私たちの心身を癒す可能性があるのです。


*IFSは、他の身体疾患の治療法とバッティングしません。他の治療法と併用しながら行っていただけます。
(精神的なご病気の場合は、事前にご相談ください)

*IFSは、現代医学を否定するものではありません。むしろ、現代医学の効果をより高める可能性があります。


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