過敏性腸症候群とトラウマに関する論文が刊行されました
佐久間が第1著者の論文が、Scientific reports誌より刊行されました!
“Association between disturbance of self-organization and irritable bowel syndrome in Japanese population using the international trauma questionnaire”
「国際トラウマ質問票を用いた日本人集団における自己組織化の障害と過敏性腸症候群との関連」
https://www.nature.com/articles/s41598-024-68196-y
過敏性腸症候群(IBS)群においてトラウマ症状の有病率や重症度が健常群より高いなど、IBSとICD-11(WHOによる疾病分類)による複雑性PTSD(CPTSD)の関係を(佐久間の知る限り)世界で初めて示した論文になります。
興味深いのが、CPTSDでIBS症状が強いのは予想していたのですが、CPTSDの一部であるDSO(disturbance of self-organization:自己組織化の障害)単独群において、CPTSD群よりIBS症状が強く、IBSのオッズ比も高かったという点です。
*CPTSD=トラウマ体験後に、PTSDの3症状+DSOの3症状を満たす(ICD-11の定義。DSM-5ではありません)
*PTSDの3症状:今ここでの再体験(RE)、心的外傷想起の回避(AV)、現在の脅威感(TH)。DSOの3症状:感情調節障害(AD)、否定的自己概念(NSC)、対人関係の困難(DR)。
*DSOはCPTSDを構成する要素ですが、現在のところそれ単独では診断名はつきません。
*オッズ比が高い=その病気になる確率が高い
また、いじめや感情的虐待なども、有意にIBSのオッズを高めていることがわかりました。
現段階ではPTSDの診断基準を満たさないいじめや感情的虐待がこのような形で身体疾患に影響することが明らかになったという点で、意義深いと思います。
50過ぎて大学院に入った理由の一つが、トラウマと身体疾患の関係を示すエビデンスを作ることでした。
小さな一歩ですが、感慨深いです。
以下、日本語の要約です。
自己組織化の障害(DSO)は、感情調節障害、否定的自己概念、人間関係の障害によって定義される。DSOは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)とともに、複雑性心的外傷後ストレス障害(CPTSD)を構成し、多くの場合、小児期のトラウマに起因しており、生涯にわたって影響を及ぼす。我々は、CPTSD、PTSD、DSO、過敏性腸症候群(IBS)と小児期の逆境との関連を調べた。IBS有症状者は健常者と比較して、DSO、CPTSD、PTSD症状の有病率およびトラウマスコアが顕著に高かった。IBSのオッズは、DSOを持つ人では3.718倍(p < .001)、CPTSDを持つ人では1.924倍(p = .005)であった。IBSの重症度はDSO群で最も顕著であり、次いでCPTSD群、PTSD群、非DSO/CPTSD/PTSD群であった。DSO症状は、小児期の逆境がIBS症状に及ぼす影響を媒介し、この影響の半分を説明した。PTSD症状は同じ媒介効果を示さなかった。これらの所見は、IBS発症におけるDSOの重要な役割を示唆している。
以下はデータの図の一部で、左側の円グラフが健常対照群、右側が過敏性腸症候群(IBS)群で、IBS群で有意にトラウマ症状を有する人の率が高いことを示しています。
(google翻訳などを使うとブラウザごと訳して日本語でお読みになれます)
おいおい内容を詳しく解説していこうと思います。